介護現場で26年間働く中で、多くの人生の最終段階に関わってきました。介護支援専門員として18年、多くの家族に家族をみてきました。
介護には、多少なりとも自信がありました。
しかし、いざ自身の親の介護になると、「大変」の一言では済まされません。
家族の意見の相違、仕事と介護の両立。専門知識があっても、現実はそう簡単ではありません。

放ってもおけないし…。
思わず、「何で私だけ」なんてこともありますが、視野を広く、専門家の意見を聞き、家族で考えていくようにしましょう。
良くも悪くも「血は水より濃い」なんてことわざもあります。家族の絆を信じていきましょう!
はじめに:介護の現実と向き合う
人の世話は様々な種類がありますが、介護は子育てとは大きく異なります。子育ては子供の成長とともに終わりが見えますが、(一般的に22年~24年程度)、介護は時間が経つほど大変になっていきます。そして、終わりが見えないのです。

介護状態にならないように頑張ってきてたんだけど介護業界にいても思うようにはいかないんだな。
もともとは両親の介護をしたいと思って、介護の世界に入ったんだけど、無力だったわ…。
母親は要介護3です。死に至るような病気はありません。医師に言わせると「老化」、「家族の問題」、「本人の気持ちの問題」と言われています。
ふと、ケアマネジャーをしていた時に言っていた言葉を思い出す。

「介護は在宅だけじゃない。施設もある。」
「施設に入っても家族が見放さない。その気持ちがあれば検討する価値がある。」
今、実行に移す時かなと思いました。
母親の症状の変化:複数の受診と服薬
介護の仕事に就いてから、年1回の帰省をしていました。
結婚して子育てが一段落した後、毎週日曜日にLINEで母と連絡を取るようになりました。しかし、いつのころからか、母がLINEに応答しなくなり、代わりに父とやり取りするようになっていました。
年3回程度の帰省をするようにしていましたが、母親の表情に寂しさがでて、「死にたい。」と言うようになりました。

大丈夫?

「武士道といふは、死ぬ事と見付たり」
こちらは大丈夫です。
父の返答は、武士の言葉を引用したもので、「心配するな」というメッセージでした。当時の私たちは、両親は何とか対応できると思い込んでいました。
実際、父親は多趣味で外出が多く、母親は愚痴を言いながらも家事をしていました。
子供に頼らない両親。
しかし、自分たちで何とかしようと両親は原因を探る為、病院へ通っていました。内科、精神科、外科、眼科と通院してすべての病院から薬が処方されていました。それは自分たちで管理できないほどの服薬でした。
検査、検査、検査と原因探しをしていたのです。
結果、母親の症状は改善することなく、食欲が取れなくなり、急遽、入院となりました。
医学的な対応は必要ですが、薬の過剰処方で逆効果になることもあります。
複数の医療機関に受診する場合の注意点
- 「お薬手帳」の活用をし、処方薬を一元管理する
- 薬局で患者の名前、受診日を正確に記入してもらう
- 可能であれば、子供が受診に同席し、「実際に薬が飲めているか」「日常生活の様子」などを医師に報告する
このような対応により、医師は全体像を把握でき、より適切な治療判断ができます。
入院中の服薬調整:最低限の治療で回復へ
入院中に医師は、すべて処方薬を飲んで効果があるもの、ないものを見直しました。最低限の服薬に調整しました。点滴から少しずつ食事もとれるようになりました。
食いしん坊の母からしたら信じられないくらい量が減っていましたが、本人の希望もあり、自宅に戻ることができました。
しかし、自宅に戻って食事がとれず、入退院の繰り返しが続きました。家族も自分たちだけではできないとこの時から介護保険サービスの利用をし始めました。
母の回復には、医学的な治療だけではなく、心理的サポートと生活環境の整備が必要でした。家族だけ解決するのではなく、介護保険サービス利用も重要です。
家族の介護負担:長女の退職と家族関係の悪化
母親の介護が本格化するにつれ、家族の介護負担が増してきました。長女は60歳を機に退職。介護に専念することになりました。同居の長男は家事を手伝うようになりました。
しかし、長男はヘルニアの手術をすることになりました。
長女への介護負担がのしかかりました。
介護は一人で抱え込むとその人の健康や人間関係に悪影響を与えます。家族会議を開き、役割分担と外部サービスの活用を検討することが重要です。
一度決めたことをそれでよしとせず、定期的な家族会議を開くように検討することが大事です。

ここでまた、いつまで続くかわからないから、介護負担で爆発しないように話し合いは大事ですね。
介護に終わりがない:在宅介護の限界
在宅介護をしていても限界はあります。父も高齢なのでいつまで健康かわからない。両親の高齢化とともに子供たちも年をとっていく。在宅介護をどこまでできるのかと不安がでてきます。
母親の場合、がんや難病などはなく、「老化」、「意欲低下」、「物忘れ」という加齢に伴う変化です。
父は当初、「もうだめだと思ったら終わりだ。」と言っていました。今現在もそうです。しかし、時間とともに「最近、いろいろなことが面倒になってきた。」と言い始め、「施設を検討してもいいのではないか」と考えるようになりました。
在宅介護は、介護者の心身の健康を損なう可能性があります。定期的に現状を見直し、必要に応じて施設利用を検討することは、本人と家族の両方にとって最善の選択になることもあります。
施設利用という選択肢:介護は在宅だけでない
在宅介護で疲れたら、介護者一人で抱え込んで限界かなと思ったら、施設利用は「介護の放棄」ではなく、「介護者が優しくなれるための選択」です。
母親が施設入所した後、家族の生活が大きく変わります。
**夜の睡眠**
介護者は夜間の対応から解放され、ゆっくり眠ることができるようになります。
**心理的な余裕**
疲れが取れることで母に対する接し方が優しくなります。
**新しい関わり方**
「散歩に連れて行ってあげよう」「好きなものを持って行ってあげよう」という前向きな気持ちが生まれます。
施設入所は、「介護の終わり」ではなく、「介護の形を変えること」です。施設に入所した後も、定期的に面会に行き、本人が孤独にならないようにサポートすることが何より重要です。
解決策:一人で抱え込まない
親の介護で困った時は、
- 相談をする:子供、地域包括支援センター、ケアマネジャーなど、信頼できる人に相談をする。
- 本人に同情しない:本人に「かわいそう」と同情することは、実は本人の尊厳を傷つけることになります。自分が逆の立場で同情されても、問題は解決しないことを理解することが大切です。
- 期待を手放す:自分以外の人が思い通りに動くことはありません。それは当たり前だと受け入れ、その上で「自分にできることは何か」を考えることが重要です。
- 自分を大事にする:自分の心身の健康を優先する。それが結果的に本人と家族みんなが幸せになれる道です。
- 施設利用を検討:在宅介護だけが「介護」ではありません。施設利用も立派な介護の選択肢です。
- 継続的なサポート:施設入所後も定期的に面会に行ったり、行けない時は花を贈ったり、手紙を書いたり、できることはあります。「見捨てていない」という気持ちを形で本人へ伝えることが大切です。
終わりに:介護は終わりがなくても家族の絆で乗り越える
介護支援専門員の経験をもとに思うことは、親の介護は、確かに終わりがありません。しかし、妥協しながらでも家族の絆で関係を取り戻し、本人の尊厳を保ちながら、介護を続けることができます。

親の介護のために介護業界に入ったのに自分の親に理想を押し付けていました。この経験を通じて、私自身も大きな学びを得ました。
これからは、介護支援専門員として「介護は在宅だけではない。」という選択肢と「自分を大事にすることが本人のためになる」ということを理解してもらうように関係を作っていきたいと思います。

介護は親の為でなく、自分のためにしていること。
押し付けず、新たな接し方で関係を作っていく必要がありますね。



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